
駅に向かう道に枝が曲がらんばかりに実を付けた立派な柿の木がある。
秋の夕陽を浸したような実を見ると感傷にも似た想いがそっと体を駆け抜けて行く。
昨今では人も鳥も飽食家になったのであろうか…。
誰に食べられる訳でも無く、何に食べられる訳でもなく…重たい実を恨めしそうにその身に付けて秋風の中に佇んでいる。
秋に実る果実は数多あるが柿はそれらの中でも最後に顔を出す。
柿の旬が終わると季節は冬に入るから…
自分は少し寂しく、物悲しい…。
昔聞いた話に実った柿の実を全て収穫せずに少し木に残す古の習わしがあった。
収穫への感謝と来年の豊作への祈りを込めて…はたまた、冬へ向かう鳥獣や旅人の渇きを癒やす為に木に少しだけ残して置くのだと云う…。
木守り柿と云うこの風習は晩秋、冬の季語として今でも親しまれている。
沈む夕陽を背に長く伸びた影の中へハラハラと落ちる、燃える様に赤い柿の葉を見ると、色の無い冬の足音がすぐそばまで来ているのだと毎年思うのである。